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ECの顧客セグメンテーションを徹底解説!LTV向上に重要な理由、4種類のセグメンテーションの使い分けを説明
ECの顧客セグメンテーションを徹底解説!LTV向上に重要な理由、4種類のセグメンテーションの使い分けを説明

ECの顧客セグメンテーションを徹底解説!LTV向上に重要な理由、4種類のセグメンテーションの使い分けを説明

はじめに

ECのLTVを向上するために顧客セグメンテーションは重要な役割を果たします。この記事はLTV向上に取り組むECマーケティング担当者の方にむけて、4種類の顧客セグメンテーションと、よい顧客セグメントの条件4Rについて解説します。

顧客セグメンテーションの概要と、ECマーケターにとってのメリット

顧客セグメントとは

顧客セグメンテーションとは、顧客を特徴や行動に基づいてカテゴリー分けすることで、顧客を同じニーズのかたまりに分類することです。顧客セグメンテーションの主なタイプには、「人口動態変数」を用いた人口動態セグメント、「心理的変数」を用いた心理的セグメント、「地理的変数」地理的セグメント、「行動変数」を用いた行動セグメントがあります。

顧客解像度を高め、マーケティング施策を最適化できる

消費者のニーズがますます多様化する現代。ただでさえ顧客の顔が見えないECビジネスが、パーソナライズされた顧客体験を実現することはとても難しいです。データを活用し、適切に顧客セグメンテーションをおこなうことで、顧客解像度を高めることができます。

顧客のタイプ別のニーズや購買目的、購買傾向を理解することで、セグメント単位でマーケティング施策を最適化することができるようになります。

ECマーケターにとって”ちょうどよい”顧客関係管理(CRM)のレイヤー

近年、CRMツールを導入して、顧客一人ひとりに最適なサポートを提供するEC事業者が増えています。実店舗での接客のように、一人ひとりと向き合うことは顧客体験の観点からとても大切です。一方で、「マーケティング担当者」の立場からすると、一人ひとりの顧客のデータを見るのは少し細かすぎます。

ECマーケターにとって、最も”ちょうどよい”顧客管理のレイヤーが「顧客セグメント」です。

ECのLTV向上に顧客セグメンテーションがなぜ重要か

LTV向上にむけた様々な施策への取り組みを最適化することができる

LTVの定義に立ち戻ると、LTVは「平均注文金額」「購入頻度」「顧客寿命」という要素に分解できます。単純ですが、これらそれぞれの数値を改善することでLTVが向上します。「平均購入単価」を高めるためにはアップセルやクロスセル、「購入頻度」を高めるためには効果的なメールマーケティング、「顧客寿命」を伸ばすための取り組みにはロイヤリティプログラムやサブスクリプションの導入などの方法が考えられます。

ただし、顧客の購買目的やニーズ、嗜好などが異なれば、LTVを向上させるために注力すべきポイントも、必要なアクションも異なります

たとえばベビー・キッズ用品のECストアであっても、おもちゃをメインに購入する顧客と、おむつなどの消耗品を中心に購入する顧客では、平均注文金額も、購入頻度も異なります。おもちゃはある程度子どもが大きくなるまで継続的に購入してくれるかもしれませんが、おむつを購入している顧客は数か月~長くても数年で顧客寿命が尽きるでしょう。この場合、LTVを向上するためのマーケテイング施策としても、おもちゃをメインに購入している顧客と、おむつを中心に購入する顧客は分けて行うことが自然です。

このように、EC顧客を適切な顧客セグメントに分けることで、セグメント単位でLTV向上にむけたマーケティング施策を最適化することができるようになります。

ターゲティングの精度を高める

「セグメンテーション」という言葉は、多くのケースで「STP」の一つとして説明されることが多いです。STPとはセグメンテーション(Segmentation)・ターゲティング(Targeting)・ポジショニング(Positioning)の略で、マーケティングの基本的なフレームワークです。

STP自体はどちらかと言えば新規開拓の文脈で使われることが多いですが、LTV向上を目的とした「既存顧客を相手にするマーケティング」においても、ターゲティングを精度よく行う前提としてセグメンテーションの巧拙がとても重要です。

たくさんの既存顧客を適切な顧客セグメントに分けることではじめて、「限られたマーケティングリソースを、どのセグメントに配分するか」「いま注力すべき・育成すべきセグメントはどこか」を議論することができ、ROIの高い施策を打つことができるようになります。

コミュニケーションをパーソナライズし、ロイヤリティを高める

EC事業者側が、ニーズに基づく適切な顧客セグメントに紐づいてマーケティング施策を実施することにより、プロモーションやメッセージの内容をより顧客の嗜好やニーズに寄せたものにすることができるようになります。

受け取り手としても、自分に近い内容のメッセージであれば関心を持って読もうと思いますし、「自分の好みを理解してもらっている」と感じることで、ブランドに対する信頼や親密さ、ロイヤリティの向上に繋がります。

このように、顧客セグメンテーションを適切に行うことで、LTV向上にむけた様々な施策への取り組みを最適化することができるだけでなく、効果的なターゲティングを行ってマーケティング施策のROIを高めたり、顧客のロイヤリティ向上につなげることができるようになります。

4種類の顧客セグメンテーション

代表的な顧客セグメントとして、人口動態セグメント、地理的セグメント、行動セグメント、心理的セグメントの4種類があります。また、行動セグメントの派生で、ECでよく使われるフレームワークにRFMセグメンテーションがあります。まず、それぞれについて簡単に紹介したあと、これらのセグメンテーションをどのように統合的に理解すればよいかについて説明します。

人口動態(デモグラフィック, Demographic)セグメンテーション

人口動態セグメンテーションは、年齢、性別、家族構成、所得レベル、職業、教育などの属性データに基づく顧客セグメンテーションの方法です。人口動態データは、各顧客のライフサイクルに紐づくニーズを洗い出す代理変数として有益です。詳細については下記の記事で解説しているので、あわせてご参考ください。

地理的(ジオグラフィック, Geographic)セグメンテーション

地理的セグメンテーションは、顧客が居住する国や地域などの地理的データを活用して地域のトレンド、嗜好、ニーズなどを踏まえたセグメントを作ることをさします。ECにおいては、地理的データを、顧客のライフスタイルの代理変数に見立てることで有益に活用することができます。詳細については下記の記事で解説しているので、あわせてご参考ください。

行動(ビヘイビアル, Behavioal)セグメンテーション

ECにおける行動セグメンテーションとは、サイトの訪問履歴や商品の購入履歴、商品使用状況、エンゲージメントなど、共通の行動パターンに基づいて顧客をカテゴリー分けする方法です。行動セグメンテーションは、顧客の行動の背景にある動機を推測することで、隠れたニーズや購買目的を明らかにし、ターゲットを絞ったマーケティング施策を実施することができるようになります。詳細については下記の記事で解説しているので、あわせてご参考ください。

心理的(サイコグラフィック, Psychographic)セグメンテーション

心理的セグメンテーションは、嗜好、ライフスタイル、態度、価値観、購入目的などの心理的要因に焦点を当てて顧客をセグメンテーションする手法です。人口動態、地理的データに加えて、行動履歴などの客観的なデータ群に対して、心理的な意味付けをおこなうことが心理的セグメンテーションの基本的な考え方である、と理解するのが分かりやすいです。詳細については下記の記事で解説しているので、あわせてご参考ください。

【補足】RFMセグメンテーション

RFM分析(またはRFMセグメンテーション)は、「行動セグメンテーション」の一種です。RFM分析は顧客の購買行動を、Recency(直近の購入からの経過日)、Frequency(購入回数)、Monetary(合計購入金額)という3つの主要要素に分解します。これらの頭文字を取ってRFMという呼称が広く使われています。

顧客をRFMの観点で点数付けしてセグメンテーションを行うことで、各セグメントの購買行動に即したマーケティング施策を打つことができるようになります。詳細については下記の記事で解説しているので、あわせてご参考ください。

4つのセグメンテーションを統合的に理解する

一般論として説明されるのは、「人口動態セグメント」「地理的セグメント」「行動セグメント」「心理的セグメント」の4つのセグメント種類がある、というところまでです。

ここからは、ECマーケターとしてどのように4つのセグメンテーションを組み合わせて実務に活用すればよいか、という点について、執筆者(顧客セグメントツールECPower - 編集部)の見解を交えつつ解説します。

「心理的セグメント」が最も基本的で大切だが、データを集めるのが難しい

まず、大前提として4種類のセグメンテーションは並列に扱われるべきではありません。

この中でも最も重要なのは「心理的セグメント」です。つまり、顧客は何が好きで、何を必要としていて、なぜ・何を目的として購入をしているのか?という点を理解することが、すべてのマーケティング施策の根本になるからです。

顧客セグメンテーションの基本は、顧客を同じニーズのかたまりに分類することですので、機械的に年齢・性別でセグメントを作成することに実践的な意味はありません。顧客セグメントツールECPowerは、心理的なニーズをうまくあぶりだすことができるセグメンテーションこそ「顧客の顔が見えるセグメント」であり、最も大切だと考えています。

ところが、顧客の心理を直接的にあらわすデータを入手することはとても難しいです。たとえば、すべての顧客に対して「何が好きですか?」「どんなニーズがありますか?」「どんな価値観を持っていて、どんなライフスタイルですか?」とアンケートで聞くのは現実的ではありません。

ことB2C領域においては、そもそも自分の本当のニーズは言語化できていないことの方が多く、アンケートを行ったとしても、的外れな結果となってしまうこともあります。

行動データから心理的要素を推測するのが、現実的かつ実用的なアプローチ

顧客の心理は、行動に現れます。サイトで閲覧した商品や、かごに入れた商品、実際に購入した商品とその組み合わせから、顧客の嗜好やニーズを推測することができます。新製品の購入履歴が多い顧客は、多様性や新規性を求める態度・心理的特徴を持っているかもしれません。

注文履歴データや、サイト訪問データ、メールマーケティングのコンバージョンに関わるデータなど、顧客の行動データであれば、EC事業者の多くは既に手元に持っています。ですので、行動セグメンテーションを行い、そこに「心理的な意味付け」を行うことが最も実用的なアプローチとなるのです。

さらに、人口動態データや地理的データが静的(Static)なデータであることに対して、こうした行動データはリアルタイムで更新されるので、最新の心理状態を把握できる点で長けています。

LTVを高めるということは、一人の顧客と長く付き合うということです。長いカスタマージャーニーの中で、商品購買・使用や、マーケティングプロモーション、サポートコミュニケーションなどの接点をとおして顧客の心理状態は日々変わっていきます。一度セグメントを定義して終わりではなく、最新の行動データを反映しながら、動的(Dynamic)に顧客セグメントを見直すということがとても大切です。

人口動態データや地理的データは、ライフステージやライフスタイルに紐づくニーズの代理変数として活用すべき

もちろん地理的データや人口動態データを用いたセグメンテーションも大切です。ただし、やみくもに年齢や都道府県でセグメントを作ってみるのは賢いアプローチとは言えません。

たとえば、地理的データは「ライフスタイル」に紐づくニーズの代理変数として捉えることができます。一つの切り口として、いわゆる都会地域と、あまり都市化の進んでいない地域の2つのセグメントに分けてみるとどうでしょうか?平均的な世帯人数であったり、自家用車の所有状況、一戸建て住宅か集合住宅か、などの点や、余暇時間の使い方といった「ライフスタイル」の違いをイメージすることができるようになります。

また、人口動態データは「ライフステージ」に紐づくニーズの代理変数として捉えるとわかりやすいです。消費者それぞれの人生のステップに紐づいたニーズを、性別や年齢、現在の職業や所得レベルなどのデータを活用することによって推測する取り組みである、と考えると、有意義なセグメンテーションができるようになります。たとえば簡単な例として、結婚や出産などのライフイベントに焦点を当てた商品の場合、20代~30代という人口動態データを活用してセグメントを作ることができます。

4つのセグメンテーションを統合的に理解する方法

顧客ニーズや嗜好、購買目的などをダイレクトに表す「心理的セグメント」を作成することが最も大切です。ただし、直接データを取ることは難しいので、行動データをリアルタイムに分析してニーズや態度、心理状態を推測したり、静的な人口動態データ・地理的データを活用してライフスタイルやライフサイクルニーズを推測することが重要です。

「行動セグメント」「人口動態セグメント」「地理的セグメント」をうまく組み合わた顧客セグメントに対して、心理的な意味付けをおこなう、ということが、ECにおける理想的かつ実用的な顧客セグメンテーションなのではないでしょうか。

優れた顧客セグメントの条件 "4R"

最後に、よい顧客セグメントの条件について触れておきます。効果的なセグメンテーションの条件は、Rank(優先順位が可能か)Realistic(有効な規模があるか)Reach(到達可能性があるか)Response(測定可能性があるか)の頭文字を取って4Rと呼ばれています。

Rank(優先順位が可能か)

ターゲティングを前提とした場合、作成した顧客セグメント同士が、LTVなどの収益性や維持コストなどの観点から優先順位付けが可能になっている必要があります。

Realistic(有効な規模があるか)

あまりに小さすぎるセグメントでは、マーケティング施策を実施した際のリターンが小さすぎる可能性があります。ECストアの規模やセグメンテーションの目的にもよりますが、少なくとも100人程度の規模感があるとよいです。

Reach(到達可能性があるか)

セグメントに対してアクセスが可能か、という観点です。たとえば、メールを主なコミュニケーション手段にしている場合、メールの配信拒否(オプトアウト)によって実際にリーチできる顧客数が極端に少なくなってしまうことがあります。

Response(測定可能性があるか)

セグメントに対してマーケティング施策を実施した際に、その反応を測定することができるか、という観点です。たとえば一般的なメール配信ツールの場合、開封率やクリック率のトラッキングを行うことができます。プロモーション施策からの売上まで計測できることが理想的ですが、まずは自社が利用しているコミュニケーション手段を念頭に置いたうえで効果測定が可能かどうかを検討する必要があります。

まとめ

顧客セグメンテーションは、顧客解像度を高め、マーケティング施策を最適化することができます。また、コミュニケーションをパーソナライズし、ロイヤリティを高めることで、LTV向上に寄与します。

顧客ニーズや嗜好、購買目的などをダイレクトに表す「心理的セグメント」を作成することが最も大切です。ただし、直接データを取ることは難しいので、行動データをリアルタイムに分析してニーズや態度、心理状態を推測したり、静的な人口動態データ・地理的データを活用してライフスタイルやライフサイクルニーズを推測することが重要です。

顧客セグメントを作成する際には、優先順位が可能か、有効な規模があるか、到達可能性があるか、測定可能性があるか、といった観点に注意してください。

顧客セグメントツールECPowerは、行動データを活用して「顔が見える」セグメントをノーコードで作成することができます。セグメント単位でLTVや平均注文金額、購買間隔といったKPIを管理・比較し、重要なセグメントを一目で把握することができます。さらに、利用中のMA・CRMツールとスムーズに連携して、セグメントに対して実施したマーケティング施策の効果を売上面で測定することが可能です。

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Author
ECPower プロダクトマネージャー

この記事は顧客セグメント管理・ジャーニーインサイト"ECPower"のプロダクトマネージャーが執筆・監修しました。記事の内容はShopifyをはじめとしたEC事業者向けのLTVグロースやCRM支援、データ分析の知見や実績に基づきます。

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